造形作家
ヒサキヨウコさん
聞く人:くまのわ代表 くろだ
場 所:ぷぺぽ編集室
写 真:ぷぺぽ編集長 青山忍さん
日進市を中心に、親子向けの造形(アート)教室や、親子が気軽に遊びに来られるイベント「あそぼ!」を開催するなど、親子向けの活動を精力的に行なっているヨウコちゃん。足元は冬でも下駄。一見、ちょっと変わった人?と思われそうですが、お話ししているといろいろなことを「いいんじゃない」と受容してくれる懐の深さを感じます。
人はみんな多面的な顔を持っています。いつも陽気に笑っているヨウコちゃんにも、自分自身や育児のことで悩んだり苦しんだりしたことがあったんだそう。悩み事は尽きないけど、それでも前向きに生きよう、私も捨てたもんじゃないと思えるような、優しい言葉がきっと見つかると思います。
もくじ---------------------------------------
1.ヨウコちゃんはいつからヨウコちゃんなの?(←いまここ)
--------------------------------------------
読了所要時間:3分 (目安)
くろだ:鬼分子の話していい?
ヨウコ:鬼分子って描いたTシャツを着てたっていう話?(笑)
くろだ:そう、専門学校の時だっけ?
ヨウコ:うん。20歳くらいかな。「みんな鬼だよね」て思ってたから、その時はね(笑)
くろだ:どうゆうこと?
ヨウコ:欲望とかいっぱいあるのに、ここでは出しちゃいけないって言われるから出さないだけで、野生に帰ったらみんな鬼なんじゃないのって思ってたの。
くろだ:なるほど。
ヨウコ:だから白いTシャツの胸のところに「鬼分子」って描いたの。「私もあなたも鬼分子だよね」っていうメッセージ(笑)
くろだ:(笑)発想がおもしろいよね。子どもの時はどんな子だったの?
ヨウコ:小学4年生くらいの時に、絵が好きだから描いてたら「◯◯っぽいよね」とか「◯◯が描く絵に似てるよね」って言われて、それがすごく嫌だったの。
くろだ:誰かが描く絵に似てるよねっていうのが嫌だった?
ヨウコ:その人に似せようと思って描いてたらいいんだけど、私はそうじゃなかったからさ。その頃になぜか、私が今知ってる知識は全部誰かに教えられたものなんだって思ったの。例えば「あ」が「ア」で「亜」で「A」でって、誰が決めたの?って。
くろだ:ほぅ・・
ヨウコ:それを、友達にめっちゃ怒りながら言ったことがあって「ねえ、なんで“あ”は“あ”なの!?」って。そしたら、みんなポカーンとして(笑)この子何言い出したのっていう顔をしてる、その情景をすごく覚えてるの。「これは言っちゃいけないことなんだ」と思った。理解されないことなんだって。大人も子どもも全員それが「あ」だと思ってて、誰かが決めたことを植え付けられてるように感じちゃって。で、全てにやる気がなくなっちゃったの。なにか教えられても、どっかの誰かが決めたことだし、何かやろうと思えば真似してるって言われるし。だから原始時代に生まれたかったなって思ってた。
くろだ:何にもないところから生きたい?
ヨウコ:そうそう。で、自分で一から作れないなら、もう今の生を終えたいと思っちゃった。死にたいっていうか、消えたいっていう願望が強かったよ。
くろだ:えー意外だね。
ヨウコ:みんなの反応見て「自分がおかしいんだ」って思ったんだよね。「自分が周りと合わないんだな」って。でも、親の愛情とかわかってるし、消えることがいけないことだっていうのもわかってるから「私は存在してることが辛い」って誰にも言えなくてしんどかった。その気持ちは中学生くらいまであったかな。高校では吹奏楽部に入って部活三昧で仲間もいて、そういうことを考えてる暇がなかったし、高校生にもなるとみんなと同じことをやらなきゃいけないっていうことに慣れてきてたから、消えたいっていう感情は無くなってったと思う。
くろだ:そうなんだ
ヨウコ:その代わりに、頭の上に常に5人くらいの自分がいるようになったけどね(笑)
くろだ:笑ってする話なのかな(笑)自分が5人いるの?全部違う人格?
ヨウコ:例えば私が誰かと話してる時に、その話に対して「何言ってるんだ」って言う人「嘘だろ」って言う人「そうだねそうだね」って言う人。天使と悪魔だけじゃ分けられないような自分がいっぱいいて。病名をつけようと思ったら解離性障害なんだけど(笑)
くろだ:いや、笑ってるけど(笑)
ヨウコ:病気ではないと思うんだけどね、私は。多い時でそれが10人ぐらいいた。でも、2〜3年前にいなくなったの。
くろだ:何かあったの?
ヨウコ:それまでは絵を描くときに勝手に手が動いていく感覚があって、描こうと思ってる自分じゃない自分が出てきた時に客観的に「あ、そうやって描くんだ」って冷静に見てたの。でも何年か前、個展の作品を作ってる時に、ストンて自分になったのがわかった。「あ、私が描いてる」って。
くろだ:自覚できるんだね
ヨウコ:そう、だからたぶん病気じゃない(笑)病院が苦手だから認めたくないっていうのもあるけど。医療とかも「誰が決めたの」って思っちゃうから。
くろだ:え、それも?
ヨウコ:うん。社会に既にある知識が全部間違ってるとは思ってないけど「誰が決めたの」っていう気持ちがいつもあるから「あ、そういう考えもあるんですね」っていうふうにしか受けとれない(笑)
くろだ:それって逆に自分のことをすごく信じてないとそういうふうには思えないよね。
ヨウコ:不安になるってこと?
くろだ:そうそう。私の考え方は合ってるのかな?とか世の中ってどうなってるのかな?とか不安になるから情報を得ようとしたり人の作った何かに頼ったりすると思うんだけど、ヨウコちゃんはそういうことよりも自分の感覚を信じてるのかなって。
ヨウコ:うん、でもその自分の感覚と社会の感覚がずれてたらやっぱりしんどいからさ。気持ちと体がうまくいかなくて、22歳くらいの時に勝手に手が震えるようになっちゃって。友達と爆笑しながら「手が震えてるー」って(笑)
くろだ:全然笑うとこじゃないよね(笑)